あざみ野のプレリュード
背骨をたどるような一本道の森
妙な緑のにおいは檻のよう
心臓は置いてきた
たけり立つならプレパレーションを
太陽も月もいらない深い森
虹の国で侵された者たち
恐れることはないから灯を振るう
のけものと泥の付いたバレエシューズ
花の蜜で濡れた牙
きんきらきんの腑
豆電球でも守ってくれたわ
汚れた爪先に金色を垂らすと
「いちごみたいな血が付いてるよ」
夢みたいで口笛吹いちゃう
したたかな灯でシルエットは怯える
花びら染めの傷が笑う
まばゆさで目蓋が重たい
聳えるアステリズムに声も出ない
あの子が描いた蝶の譜を鳴らす
誰かが守ってくれたブローチ
お姫さまじゃないひとが森を歩くと
うなじから歌が抜ける
花の名前に馨しさを意味付ける
余った骨たちのマズルカ
らくがきみたいなきらめきと歩む
爪の先まで賦を憶えていて
若い指先で鳴らしておくれよ
汚れていたって光は灯る
けたけた笑って、死んだみたいに。
口がなくてもお喋りしたいから
踏み均す死骸のきらきら
空っぽのこころにも勝手に花は咲く
骨は今もわたしの灯で燃えている
スキップでたどる愚かなお話
役立たずなのに骨を食む
迷子になりたかったひとのパン屑
吐いた音符が森を深くする
C3とTh7のぽろんぽろん
背骨とさよならしてピルエット
kemono